2007年12月23日

ウインチにおける索送り装置:序論 このエントリーを含むはてなブックマーク

 みこさんから「ウインチの索送り装置の構造について教えてください」というリクエストがあったので書きます。思いがけないリクエストだったので、実物の写真を使った説明ができないのが残念です。

 自分が知っているウインチは科技大ウインチと学連四連ウインチだけなのでその二つについて書きます。どちらも基本構造は同じです。

 うちの航空部でたまにウインチの解説本書いたら?なんて冗談で言われていたけど、まさかそれに近いことをするなんてね。シリーズ化したりする?


 機構を説明するに当たり、科技大ウインチの送り装置の概要図を作成した。次のサムネイルのリンク先に拡大した画像がある。文章とともにそれを参照していただければわかりやすいと思う。

071223 索送り装置概要図.jpg
図1.索送り装置概要図

 なお、この文章は一人のウインチマンがその経験、知識を元に記述している。そのため、勘違いや理論的でない箇所があるかもしれない。そのような箇所を発見された場合はコメントやメールなどで教えていただけるとありがたい。
1.索送り装置の必要性


 索送り装置の機構を説明する前に、索送り装置に何が求められるのかを確認したい。

 ウインチとは機体につながれた索を巻き取ることで機体を加速させ、機体に高度というエネルギーを与える装置である。索が巻き取られるド
ラムの軸方向にはある程度の長さがある。科技大ウインチについて言えば80cm程度ある。
 ドラムにある程
度の軸方向長さがある理由は次の様なものだろう。ウインチは曳航中にエンジン動力を間断なくドラムに伝えなければならない。なぜならエンジン動力を途絶えさせることは索切れなどと同じであり、索張力がなくなったとたん、機体は減速を開始し、そのまま上昇姿勢をとっていればまもなく完全失速する。また、索張力を頻繁に変化させることはパイロット、機体、索など曳航に関する要素についての負荷が高くなる。これがウインチ曳航中に基本的にギアチェンジをしない理由である。
 ドラムの大きさがどのようにして決まるのかを考える。たとえば科技大ウインチでは機
体がエアボーンする索巻き取り速度でエンジンが最高トルクを出す1700rpmになるように設計されている。エアボーン後の曳航は徐々にエンジン回転数を
落として、索巻き取り速度を減速させていく。その際にエンストしないよう、回転数が少なくともアイドリングを下回らない様にしなければならない。そのため、ドラム直径はエア
ボーン時の索巻き取り速度を満足する直径であり、ドラム軸方向長さは機体が離脱直前の索巻き取り速度でもエンジン回転数がアイドリングを下回らないドラム
直径になる様な長さが必要になるのである。また、科技大ウインチは索巻き取り中のドラム直径の変化を少なくするということも考慮されている。
 ドラム軸方向に長さがあるために軸方向に対して平均的に索を巻き取らなければならない。なぜならドラム直径が局所的に変化した場合、索巻き取り速度もそれに応じて変化する。それにあわせるようにエンジン回転を変化させるのは至難の業であるし、エンジンがそのような回転数変化に追従できないだろう。以上から、ドラム軸方向に対して直径のばらつきなく索を巻き取る必要がある。そのために索送り装置を用いて索巻き取り時のドラム直径が均一になる様にする必要がある。
 なお、ドラム軸方向長さの短いTOSTウインチに索送り装置がない理由は以上の考察から容易に想像のつくものである。



2.索送り装置駆動方式


 索送り装置の駆動方式にはいくつか種類がある。私がよく知っているのは科技大ウインチの方式である。学連四連ウインチも科技大ウインチとほぼ構造は同じである。
 ここで、先に挙げた索送り装置概要図を見て欲しい。図1.は科技大ウインチのものを例にとってウインチを上から見たところを図示している。
 エンジン回転をどういう順で索送り装置に伝えているのかを説明する。エンジン回転は図の装置AからFへアルファベット順で伝達される。まず、エンジン回転はドラムに伝わりA.ドラムを回転させる。ドラムの回転はB.ベルトを通してC.減速器に伝わる。減速器で減速された回転運動はD.送り稼働チェーンに伝わる。送り稼働チェーンは回転運動を直線運動に変換する。送り稼働チェーンによりE.送りロッドは直線運動をし、F.送り装置を動かす。
 この科技大ウインチの方式では送り稼働チェーン部分が飛び出す様な形になる。設計者によればこのような構造になったのは部品の入手性のよい規格品のみで構成できるようにしたためであるそうだ。

3.索送り装置構造
 ここでは索送り装置そのものの構造を説明する。例として科技大ウインチの索送り装置の構造を示す。索送り装置は次の図の様に縦横に2本ずつローラーを備えている。送り装置のドラム側には索切断装置(ギロチン)が装備されている。
071223 索送り装置構造.jpg
図2.索送り装置構造
 索送り装置にローラーが装備されている理由は索が常に送り装置の正面に伸びているわけではないからである。横風があれば左右に伸び、送りに斜めに入ってくる。また、機体が上昇していけば索は上から斜めに入ってくる。このように索送り装置に対して角度を持っている索をドラムに対して常に一定の角度に直すことで索が均一に巻ける様にする。ローラーを装備することで索が斜めに入ってきても引っかからずに巻き取れる。索には索切れ修理などのために銅スリーブによる補修がなされていて、そのような箇所や索そのものの摩耗を減らすためにもローラーの回転はスムーズに行われなければならない。

4.送り自動追尾装置
 送り装置は索の持つ角度によって上下に角度を持てる様に作られている。これは機体が上昇していくと、索は上方向に角度を持つのでそれに合わせる様に送り装置が動くことで送り装置と索のなす角をなるべく少なくするためである。学連四連ウインチは索送り装置が4基ついていて索送り装置全体の前側が重いため、離脱後に索送り装置はその自重でもって曳航前の位置に戻る。しかし、科技大ウインチは単連ウインチのため、送り装置の前側は後ろに対してそれほど重くない。そのため、離脱後にその自重で元の位置に戻るということがない。そこで科技大ウインチにはウインチ操縦席に座ったまま索送り装置を元の位置に戻すための装置が装備されている。上を向いた索送り装置の後部を下から空気圧によって上下に稼働する棒によって押すことで元の位置に戻すものである。操縦席にはその装置に空気を送るための弁を操作するノブがある。


5.まとめ
 以上が簡単であるが、ウインチにおける索送り装置の概要である。索送り装置の機能は単に索巻き取りが均一になる様にするというだけである。単純ではあるが、安全な曳航つまり、安定した曳航を行うには必要不可欠な装置である。索巻き取り時のドラム直径が軸方向に不均一になっては、索巻き取り速度を安定化させることが難しい。そのために送りが移動するシャフトの表面の維持、送りロッドの取り付けなど常に送り装置がなめらかに移動できる様な状態を維持しなければならない。
posted by ゆうじ at 23:55 | 埼玉 ☁ | Comment(2) | TrackBack(0) | 航空部 このエントリーを含むはてなブックマーク
この記事へのコメント
メモメモメモ_φ(._.φ(゜-゜;φ(._.φ(゜-゜;φ(._.φ(゜-゜;)カキカキカキ

)))≡トコトコ.......
Posted by みっく at 2007年12月24日 12:40
毎度コメントありがとうございます。

普段の生活で役立つこととは思えませんが、
こういうことをまじめに考えないといけない世界もあるということなのです。
Posted by ゆうじ at 2007年12月24日 22:03
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